彼を抱きかかえた。
動かしちゃいけないかもしれなかった。
彼は意識が無かった。
頭から血が流れてくる。
手が真っ赤に、体中が真っ赤になった。
叫んだ。息が荒くなる。
頭がおかしくなりそうになる。
さっきまで笑ってた。
さっきまで頭から血なんか出てない。さっきまで目を開けてた。
状況がつかめなかった。
仲間たちはパニックに陥っていた。
まわりの人たちが集まってくる。ただ一点視線を合わせるだけ。嘆きの目だったろうか。
冷たく突き刺さるような視線もあった。
誰が電話したか分からないが
救急車が即座にやってきた。
彼も私も連れていかれた。
私たちは病院で呆然とした。
彼は緊急手当てを受けている。
仲間の親がそれぞれやってくる。みんな泣いている。
彼の両親が冗談じゃないという顔でやってきた。
私は冷静に一からすべてを説明した。
声が震える。
すると彼の母親が涙を流しながら私を痛いくらいに抱きしめた。
私はいきなりの抱擁に戸惑った。
しかし、何故かというくらい涙が出てくる。もう何年も涙など流さなかったのに。
ありふれる涙に私は彼の母親に身を任した。思い切り泣いた。