「お前は好きなのか?」
なるべく優しく聞いてやる。
「好きだよ」
笑いかけてくる。
俺は、目を背けた。
当時、自分は普通だと思っていた俺でも、ドキリとする顔。
「ねぇ、ロク太くん、寒くない?」
「まぁ、寒い・・・って、俺、名乗ったっけか?」
もしかして、超能力者!?などと馬鹿なコトを考えてしまった自分が恥ずかしい。
「僕、巴(ともえ)」
「なんで俺の名前を?」
何故だろう、一瞬、夕暮れ時に、首の無くなった石像に座って第九を歌っていた白髪の少年と、ちょっと精神的に危ない黒髪の少年の会話が思い出された。
「学校一緒だから。で、傘、入れて」
簡潔に理由を述べ、傘に入ってくる。
「おぃ!」
「大丈夫、そこまでだから」
傘の柄を持ち、勝手に歩き出す。
「ったく」
不思議と、嫌じゃなかった。
不満なのは、もとから濡れてたコイツがくっつくせいで、服が濡れ、肩も少しはみ出し、身長差が結構あるので、さしにくいだけだ。
時折話しかけてきたりするが、俺はその度にドキドキしていた。