皆さん、大変もうしわけございません。No.8の下を書いた後、3ヶ月も放置してしまいました。皆さんの温かいレスはもちろん読ませていただいていたのですが、つい後回しにしてしまいました。そして今日、久しぶりにのぞいてみると、3ヶ月近く経っているにも関わらず、最近のコメント等もあって、本当に申し訳ないことをしたと痛感いたしました。まだHシーンにも入っていないのに、こんなに多くの方から支持されているのに・・・・・・と、言い訳を長々と説明してもしかたがないので、続きを書きます。スレを変えることはあえてしません。他の投稿者様の邪魔にもなってはいけないと思うので、ここで細々とやらせていただこうと思います・・・・・・以前の読者さん、気づいてくれるでしょうか?それだけが心配です・・・・・・
続き
「あーあ、閉まっちゃったよ」俺は面倒なことになったと頭をかいた。
一方の隼人はというと、慌てる様子もなく、ウォークマンをくるくる巻いてカバンになおしていた。・・・・・・次の言葉も出てこなくて、俺は急にきまずくなったと思って口をつぐんだ。しばらくの間沈黙が続いた。だいぶ電車が走った後、今まで窓から風景を眺めていた隼人が、そのまま外側に視線を向けたままで口を開いた。
「なあ、翼」
俺は隼人に名前を呼ばれてどきっとした。いきなり心臓が高鳴る。
「な、何?」俺はそう答えたけど、思わず声が裏返ってしまった。すると、隼人はやっとこちらに視線を向けた。隼人と目が合うと、いきなり隼人は屈託のない表情で笑った。
「今日、学校さぼろっか」
(またそんな笑顔でそんなことを言うだろう、そんなにきれいな笑顔で言われると断れないじゃないか)と心の中で思ったけど、なぜだか隼人にはぶっきらぼうな自分を演じてしまう。
「バカいってんじゃねえよ!次の駅で乗り換えて学校行くぞ!そしたらまだ間に合うよ」
すると隼人の表情は一変して、「ええー、一日くらいいいじゃんか!」
「ええーっておまえ、部活があるだろ!部活が」
「そうだけど・・・・・・わかった、行くよ」
隼人はしょんぼりした様子だった。それを見て俺はまたなんてことをしてしまったんだと悔やんでしまった。せっかくの隼人の誘いを断ったのだ。心と言葉があまのじゃくな俺をつくづく悔やんだ。でもこのままではやっぱりだめだと思って、俺は意を決した。
また窓の外の景色を眺めている隼人の横に座ると、どもりながら言った。
「も、もし学校サボったら、どこに行くんだよ・・・・・・」
すると隼人は不思議そうな目をしてこちらを見た。そして俺の言葉の「サボってもいいよ」という意味を理解したのか、満面の笑みをした。
「じゃあ、このまま乗ってあそこへ行こう」
「あそこ?」
俺が不思議がっているのもお構いなしに、自己解決したらしかった。
俺たちが降りたのは、学校の駅から30分ほどいったところだった。そこには大きなショッピングモールがあった。
「じゃあ、行こっか」
「あ、ああ」
俺は隼人に連れられて中へ入った。中はとても広くて、数々の有名ブランドが出店していたりした。そこで男向けの服屋に入ったり、雑貨屋を見て回ったり、本屋に入ったりした。それはさながらデートのようなもんで、「こんな服どうかな?」「この本知ってる?」「これ面白くない?」と隣で興奮する隼人に、俺は「いいんじゃない?」とか反応のうすい言葉しか返せなかった。それでも隼人は満足してくれたみたいで、始終笑顔を絶やすことはなかった。俺もそんな隼人を見てると自然に笑顔になって、バカみたいにはしゃぐ隼人にほほえましささえも感じた。
昼食はもちろんそこで一緒に食べて、その後もぶらぶらと店内を回った。
コーヒー専門店でコーヒーを注文して、それを飲みながら店内を歩いている時、突然隼人がひらめいたように声を上げた。
「あ、映画観ようよ!どうせ時間あるんだしさ」
「うん、いいよ」
俺はそう答えると、ショッピングモールに隣接する映画館で映画をみることにした。二人でどの映画を観ようか話し合った結果、洋画のアクションものの映画を観ることにした。時間は2時から上映だったので、その間はゲームセンターへ行ってUFOキャッチャーや対戦ゲームなどを楽しんだ。
そして映画の時間になって俺たちはジュース片手に上映スクリーンへ入った。俺たちはゲームセンターで遊びすぎて若干遅れて入ったため、映画の前告知が始まっていた。入り口から客席を見回してみると、観客は俺を含めて10名程度だった。一応人気の映画だったが、平日だし時間は早いし、こんなもんだろうと思われた。
俺は隼人についていくと、隼人はずんずん奥まで行って、「ここだよ」と指示された席は一番後ろの真ん中の席だった。
「べつに一番後ろに座らなくたって・・・・・・」
「いいじゃん、最後尾の方が見やすいんだし」
「そうだけどさ・・・・・・ま、いっか」
俺たちは席に座った。
他の観客は中央の、スタッフおすすめの席に座っていたり、若い女性の二人組みはやはり中央の左隅に座っていた。みんなばらばらに座っていたけど、俺たちほど離れている感じではなかった。
映画が始まって証明が落とされ、室内はぐっと暗くなった。俺たちは集中して映画に見入っていた。しかしそれも前半くらいまでだった。
映画が上映されて1時間半くらいが経った時、俺は肘掛に隼人の手が置いてあることを知らずに自分も置いたのだ。ふと肘掛を見ると隼人の手が先にあって、そのまま隼人の顔を見ると目線が合った。俺は流す程度に軽く「ごめん」と言えばよかったのに、なんか妙に意識してしまって、本気で、ごめんと言ってしまったのだ。隼人はそれで軽く「いいよ」と言ってまた映画の世界に戻ったみたいだったけど、俺はそうはいかなかった。本当にあの一件以来、妙に隼人を意識してしまっている自分がいる。そしてそんな中で初めて触れた隼人の体(手)。意識しないはずがなかった。俺は急にそわそわしだして、いろんなことを考えてしまった。これから俺たちはどうなるんだろうとか、隼人はどう思っているんだろうとか。結局、隼人の本当のところをまだ聞き出せていないわけだし、自分自身、隼人とどうなりたいとかいう願望はなかった。ただ気になっていたのは、さっきも言った、これからどうなるんだろうということと、隼人は俺をどう見ているのだろうということだけだった。
あまりに映画に集中していない俺に隼人が気づいたようで、「どうしたの?」と声をかけられた。俺にしてはそれも不意打ちで、慌ててしまって「い、いや、なにもないよ」と絶対なにか言いたいことを隠してるような返事をしてしまった。
すると次の瞬間、隼人の腕がすっと伸びると、俺の手をつかんで肘掛に置いた。俺の手が下で、俺の手の甲から上に重なるようにして隼人が握った。俺はとっさの隼人の行動に思わず見上げた。すると隼人は何も言わずににっと笑ってまたスクリーンに没頭した。一方の俺はと言うと、意識している相手に手を握られたままの状態で集中できるはずもなかった。心臓はばくばくと早鐘を打って、ここからどうしたらいいんだよと、途方に暮れて、汗がにじむ思いがした。
するとそれをからかうように、また隼人が声をかけてきた。
「ねえ、翼」
俺はどぎまぎしてから答えた。
「な、なんだよ」
俺は平常心を保っているんだぞという見え見えの演技をするように、スクリーンを見つめたまま答えた。すると、隼人の反対側の手がすっと伸びてきて、隼人の側とは反対の頬に手が回ると、優しく首を回された。そこには真剣なんだかわからない、少しはにかんだ隼人の顔があった。
「キスしていい?」隼人が俺のほかにだれも聞こえないよう、静かに言った。ほとんど映画の大きな効果音でかき消されたが、それでも俺にははっきり聞こえた。
(そんなこと答えられるわけないじゃん)
そんなことを思っていると隼人の顔が近づいてきて、俺の同意も得ずにキスをするんだとわかった。俺に逃げる権利もそんな度胸も持ち合わせてなく、俺は隼人にされるがまま、映画館の後ろで二度目のキスをした。