高校二年に入って、俺は部活を中途半端な時期に始め、Cは18になったら速攻免許と車をゲットするためにバイト三昧。加えて高校は別々。
要するにほとんど会う機会がなかった。お互いの家に泊まりに行ったり来たりも滅多になくなり、たまに電話かメールで日常生活の報告をする程度がやりとりのほとんどになった。
夏休みが過ぎて、秋の忙しい時期もあっという間に。そして冬、ようやく二人ともまとまった休みが取れることになるまでちゃんと会う時間はなかった。
といっても、別に付き合ったりとか、恋人同士みたいに好きあっていたわけでもない、友情の上に成り立った関係だったから辛くはなかった。ただ時折寂しくなるとCの温もりが恋しくなる日がちょくちょく。だれかと付き合った時期もあったけど、申し訳ない。やっぱりCとすごす時間とは根本的に感覚が違ってた。
会わない間もCには彼女ができたり別れたりっていう話は何回かしてた。でもあんまり幸せそうじゃなかった気がする。それに本人が車資金稼ぎにのめり込んでる間は、俺ですら(自意識過剰ですが)相手にされないんだから彼女たちも放っておかれてるんだろうな、などと思ってたり。
そんな時Cからメール。絵文字も何も使わない無骨なメール。相変わらずのトーンに、珍しい内容。
C「寂しいんだけど。今からうち来ない?両親親戚の葬式行ったから、誰もいないし」
「OK。三分後ね」
正直なところ寂しいとか、会いたいとか、似合わない男なのに、ぷぷぷって思った。とにかく俺はコレクションからDVDを一枚つかんでCの家に直行。
すぐに部屋に案内されて、茶が出てくる。でも微妙な沈黙。
それを破ったのは以外にもCだった。
C「あんさ、俺のこと嫌いになったん?」
「・・・・・・・は?」
C「いや・・・つうか最近気づいたんだけど、今年ぜんぜん会ったりとかしなかったから・・・考えてみたら、嫌われてんのかと思った。いつもはお前からよく暇だから来いとかくるじゃん。」
「・・・・・・っぷ!はははは!あり得ないっしょ!つうか忙しそうにしてたのそっちじゃん!あはは、まさかそれで寂しくなっちゃったとか?も〜、つうか早く言えって!俺だってたまに寂しかったし・・・でもお前のほうがかなり忙しかったから俺気遣って会いたくても我慢してたの!」
C「まじかよ・・・馬鹿じゃん、お前人のことどうせ気にしないでいつも呼び出すくせに。そういういらない気遣うなって、わかってんだろ・・・」
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C「つーかさ、まじ微妙に寂しかったから。ちょっとこっち来い」
そんな感じで、俺はCに優しく抱きとめられた。
そのときは凄く浮ついた気持ちになって、思わず、、Cの頬に初めてキスをした。
よく知った顔にキスするのは凄く妙な感じだった。俺の顔は赤かったと思う。少なくともCの頬は赤らんでた。どきどきがお互いのセーター越しに伝わってたし。
そしたら今度はCのほうから・・・
C「やっぱこういう時はこっちだろ。」
そう言ってまたキス、今度は唇に。
やばいやばいやばいやばい!思考はそんな感じだったけど、恐ろしく慣れてるCの技にすっかり飲み込まれた俺は合わせるように濃いキスをしてしまった。
そこからの夜は長かった。想像にお任せするところですが、一つに、あのキス一つでやかん三十杯は沸かせるんじゃないかと思うほどお互いの体に熱が生まれたこと。それに、彼の家には夜じゅう俺たち二人しかいなかったこと。状況は色んな意味で完璧だった。ついでに言うと、その夜DVDはいらなかったみたい。
完全に友人のラインを俺たちが越えてしまった一夜の出来事。でもこれはちょっとした始まり。
ここまで来ても俺たちが恋人にならなかったのは、結局Cがバイでも女のほうが好きだったからか、先に起きる出来事がそれを止めたからかは未だに分からないけど、
高校が終わるとに俺たちはついに完全に別々の道に行くことになる。