あの冬の一夜から、柵を乗り越えた俺とCはその後も友人以上の関係を持つように。でも表向きにはまったく今まで通りの友人関係を保ったまま。
お互いの恋愛事情は暗黙の了解のもと聞かず語らずという事に。それがダチっていうステータスを守るためだったのか、ただお互い何かを無くすのを恐れてたからなのかはわからないけど。向こうの浮いた話をなんとなく聞いたときも、嫉妬よりも安心感のほうがなぜか勝ってたし。
俺といえば、大学進学の準備のために(とある事情から)忙しく、体一つでC以外の誰かを特別な相手としてどうこうする時間がなかったから、表面的にはCに一途?な恋愛体制をとってたりした。
二人きりで過ごす時間は本当に、まったりべったり。いちゃいちゃしたりってより、犬とか猫が仲間とおしくらまんじゅうしてるようなすごし方。俺が本を読む間膝枕させたり、テレビ見る間俺の脚の間にCが寝そべったり。夜にはもう少し野生的なこともしたりした。
Cが車と免許をとってからは、二人っきりで思いつき旅行にしょっちゅう出かけるように。基本的に、Cからメールが一言、地名と?マーク。俺から返信、OK。プランも何もなく、メール→返信→三分後には出発。日帰りだったり、一泊旅行だったり、日によりけりだったけど、色んなところを二人で回った。
そんなこんなで、気持ちの上では友人っていうラインを越えすぎないようにお互い気をつけていたのだけど、なんとなくお互いを恋人を見るような目になるのは時間の問題だって俺もCも気づいてたと思う。
このまま惰性に従ってたら間違いなく恋人になってたんじゃないかな。
それを止めるのは、そんなに難しいことじゃなかったんだけど。
Cは高校を卒業したらすぐに就職をするつもりでいたみたい。
俺は、もうCが就職決まるころには海外の大学に進学が決まってた。
そう、地理的にお互いを愛し合うのは賢い選択じゃない。夢中になったら辛いだけ。進む道が違いすぎて、ここからは交わらない将来の行き先。
だからある時俺とCは三時間くらいかけて、初めてお互いに対する気持ちとか、これからの関係を語った。結論としては、これからも大事なダチ同士でいること。
恋人である以上に、お互いかけがえのない友達でいることのほうが幸せかもねってことで。
それからは、夏の学校が休みの間の俺の帰国と、Cの空港までのお出迎いが毎年の行事になった。夏の間は今までと変わらない関係。今もキスしたり、一緒に夜を過ごすけど、友達としての時間を過ごすことのほうが多くなったかな。
今年の夏で6回目の帰国をする俺にとって、いつでも地元に帰るのが楽しみなのは、いつも変わらない景色と、いつもかわらずに迎えてくれる顔があるからだと思う。恋愛よりも大事な何かをラッキーなことに俺はCを通して発見できたと思う。