卒業式の翌日、夜になり俺はケータイを汗ばむ手で握る。
俺「なぁ、今電話していいか?」
心臓が早鐘を打ちながら俺は待つ。 5分後。
O「いいよ。」
俺は電話をかけようとするが、手が震えていてボタンを押そうにも押せない。しばらくしてなんとか電話をかける。
プップップップップ、トゥルルルル。電話が繋がろうとしている。
ドクッドクッドキドキドキドキ。鼓動の音がしっかり聞こえる。
O「もしもし。」
俺「っよう。」
俺の声は震えまくっている。
O「どうしたんだ?」
Oはいつもと変わらない。
俺「っいやっその〜。昨日は長い時間ありがとうというか、ごめんというか。」
とりあえず話そうと必死だ。
O「んーああーおう。」 (←あまり覚えていない。)
俺「えっとそれでだな。お前に話したいことがあるんだ。」
もう心臓が限界をむかえそうだ。
O「そっか、何?どうかしたか?」
俺「俺な、Oとは腹割って話したいというか、隠し事をしたくないんだ。」
O「おう。」
俺「人に言えないことがあって、聞いたら引くかもしれないってか引くと思う。」
O「うん。」
俺「でも、それでも俺はOにこの事を言いたいんだ。」
O「そうか。わかった。」
緊張が最高潮に達し、なかなか言葉が出で来ない俺。
俺「っと、その。」
O「ああ。」
俺「だから、な。俺・・・。」
O「うん。」
〜省略〜 ものすごく長かった気がする。
俺「よしっ!じゃあ言うからな。」
O「いいぜ。」
手が震えて音が聞こえそうだ。
俺「俺、俺な・・・ゲイなんだ。」
俺は少し放心状態だ。Oは優しい口調で言う。
O「そうか・・・そりゃあ人には言えないな。」
俺「ああ。っその、別にだからって重く受け止めないでくれ。」
俺は何がなんだか分からない。
O「重くって、あーうん。」
俺は安心感からか、体の震えは治まっていて普通に話せるようになった。Oはその後俺のことをいろいろ聞いてきた。いつごろからそうなのか。初恋はどうなのか。女子をかわいいと思うか。かっこいい人には目が行くのか。いろんな事を話した。Oは戸惑っていたが、俺を軽蔑するような口調ではなくてなるべく普通に今まで通り話してくれた。俺は嬉しかった。Oの言葉の一つ一つが身にしみる感じがする。俺も自然といつも通りになっていた。
本当にいつも通りくだらない話をずっとしていた。時刻はもう1時だというのに全然眠くならない。Oも同じようだ。
ップーップーップー。突然電話が切れた。Oのケータイの電池が切れたらしい。通話時間を見ると・・・118分。我ながら良く話したと思う。でも、楽しかった。いや何より嬉しかった。Oは俺と換わらずに接してくれた。それが嬉しかった。俺はOにメールを送った。
俺「電池気付けよ。」
O「いやあ切れちゃったなぁ。ていうか、もう1時やん!」
いつものように、お調子者なOだ。
俺「ああ、通話時間見たら118分だった 汗。
なんだかんだあったが、まあ、ありがとな。」
俺はこの時はとても素直になれた。
O「おやすみ〜な(-.-;)(顔文字これでいいよな、たぶん)」
気にすんな、という感じみたいだ。
俺「ああ、いいと思うぞ。んじゃな。たまにはメールとかよこせよ。」
O「お前も大学の結果メールしろですよん。」
やはりいつものOだ。
俺「それはわからんな。」
俺もいつものようにひねくれた返事をした。
こうして、俺の恋は相手に想いを伝えることなく終わる。でも俺は後悔などしていない。大切な友達とのつながりが強くなったように感じられた、これだけで俺には十分だ。これからもこのつながりを大切にしたい。
俺は布団の温もりをいつも以上に感じながら眠りにつく。