今日も家から地面を叩くかのように長い坂を下る。 勢いは此の先の信号にあり… 完璧にスタイリングした髪、途中、うつ向きかげんの女子の冷たい視線、 スニーカーが黒くなる事なんて忘れてた。
腕時計は持っていない。 ケータイはポケットの中に在るけれど、音楽、聴いているから無闇に出すと、ああなんの。
イヤホンと腕が絡まって落とすわけ。
そんな小さな不幸に注意する苛立ち、背負いながら、突っ走る。 アブリルの"マイ・ハッピーエンディング"が此の姿を絵に変えるんだ。 自分、頑張ってるよ って
橋を渡って、ちょっとした登り坂をひょいと越えたらやっぱり、赤信号。
バスがボクの前を横切る。 一台行って…二台、此処のバス停は時間にルーズでこんなの当たり前。 一台、遅れたら皆、遅れる。 プラス、信号機は待ち時間が長く、急ぐバスは見向きもせずに消えてゆく…
今だ!
て、青に変わった瞬間に、二台目のバスが客を下ろすギリギリ、突っ込む。 そして、お決まりの何気無い顔。 其れでも
「何とか五分前に着きそう…」
ふつふつと開く毛穴、ワックスが汗で溶けてそうな感覚、窓に写る自分は疲れてる。 服も拘らないし、格好良いなんてめったに言われないし、最悪な人生を選択したもんだ…
ボクのハッピーエンディングってこんなもんよ。 きっと
駅に着いて其所から30分、快速に乗る。 他人が窓側に居てもお構い無く座る。 何時からだろう…、今まで人とは距離を置く人間だったのに何かがボクをこうした。
家から一時間も掛かる今のバイト先。 こうもして行く理由は、一ツの恋が切っ掛けだった。 去年の夏、キミはボクを如何思っていたのか聞きたいね。 今、誰も好きにはなれないんだよ。
ヒロキ… 生きるって、とことん不思議な事だと思うよ。